娘のバージンロードに立つその日、人生で一番“かっこいい父”でいたかった

※これはアンチエイジング物語です。

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『最後に見せたい、父としての“かっこいい姿”』

「お父さん、今度の日曜日、ちょっと時間ある?」

休日の午後、珍しく娘の美咲が真剣な表情で話しかけてきた。社会人になってからはすっかり大人びて、最近は彼氏の話なんかもちらほら聞くようになったが、こんな風に落ち着いた口調で呼びかけられると、つい構えてしまう。

「実は……結婚することになったの」

沈黙のあと、胸の奥がじんわりと熱くなった。幼かった頃の美咲の姿が一気に思い出されて、思わず涙腺がゆるむ。手のひらに収まっていたあの小さな手が、今ではしっかりとした大人の女性のものになっているのだ。

「それで、式にはぜひお父さんにもバージンロードを歩いてほしくて」

その瞬間、自分の中で何かが弾けた。

嬉しい。誇らしい。でも同時に、鏡の中の“老けた自分”が浮かんでしまった。白髪、たるんだ顔、ぽっこり出たお腹。正直、自信がなかった。「この姿で美咲の横に立つのは、ちょっと……」と、一瞬でも思ってしまった自分が情けなかった。

でも、だからこそ──この機会を“最後のチャンス”にしようと決めた。

「変わりたい」じゃない、「取り戻したい」

翌日から、生活を一変させた。早起きしてのウォーキング、食生活の見直し、そしてYouTubeで見つけた「40代・50代のためのアンチエイジング筋トレ」。最初は筋肉痛でまともに歩けなかったが、不思議と気持ちは軽かった。

夜にはスキンケアにも挑戦。娘が残していった美容液を拝借して、毎晩のルーティンにした。「男が化粧水なんて…」と過去の自分なら笑っていたかもしれない。でも、今の自分は“父としてのかっこよさ”を取り戻すために、本気だった。

3ヶ月後──鏡の中にいたのは、少しだけ誇らしい自分だった

顔色が明るくなり、肌もツヤを取り戻してきた。腹も少し凹み、背筋も伸びてきた。久々に会った会社の同僚に「若返ったな」と言われた時、心の中でガッツポーズした。

そして迎えた、美咲の結婚式当日。

タキシードをまとい、バージンロードの入り口に立つ。隣にいる美咲は、涙を堪えたような笑顔でこちらを見上げていた。

「お父さん、今日すごくかっこいいよ」

たったその一言で、3ヶ月間の努力が全て報われた気がした。

娘の記憶に、最高の“父”として残るために

式の終盤、娘の手紙に「お父さんが頑張って若返ろうとしてたの、ちゃんと見てたよ。すごく嬉しかった」と書かれていた。

アンチエイジングは、自分のためだけじゃない。誰かに「誇れる姿」を見せるための挑戦でもある。娘の大切な日に、自分も“父として”人生最高の一日を過ごせたのだ。