
※これはアンチエイジング物語です。
「…久しぶりだね。元気だった?」
数年ぶりに彼女と再会した瞬間、彼女の目が一瞬、大きくなった気がした。
「あれ? なんか…変わった?」
そう言って、彼女は少し首をかしげて笑った。昔なら、そんな言葉をもらえるような男じゃなかった。むしろ彼女には、何度も“友達止まり”の烙印を押され続けた過去がある。
──そう、大学時代から社会人になってもしばらくの間、俺はずっと彼女に片想いをしていた。
何度か食事に誘い、映画にも行った。でも、それ以上は決して進まなかった。
「◯◯くんはいい人だけど、恋愛って感じじゃないんだよね…」
彼女はいつも申し訳なさそうにそう言って、優しく俺の気持ちを受け止めながらも、核心では拒んだ。
あの言葉が胸に刺さって、抜けなかった。
その後、俺は恋愛から距離を置いた。仕事に集中し、気づけば40歳。鏡に映る自分に自信が持てず、年々老け込んでいくのをただ受け入れていた。
そんなある日、偶然観たテレビで「アンチエイジング特集」が放送されていた。
「老けは止められない。でも、遅らせることはできる」
その一言が妙に心に残った。
「今のまま年を重ねて、誰かにまた“恋愛じゃない”って言われるのか…?」
そう思った瞬間、心のどこかで何かが弾けた。
まずは小さな一歩。洗顔フォームを見直し、化粧水を使うようになった。次に取り入れたのはホワイトニング。くすんだ歯を見て、「これじゃあ清潔感なんて出ないよな」と思い立った。
次第に、筋トレや食事の見直し、姿勢を意識するようになり、体のラインも少しずつ変わってきた。
周囲の反応も少しずつ変わり始めた。「なんか最近若返ったね」と言われるたび、自信が生まれた。そして、心まで前向きになっていった。
そして迎えた今日。大学の同窓会。
そこに、彼女がいた。
変わらず綺麗で、でも少し大人びた表情。何年ぶりかの会話に、最初は緊張していた俺も、自然と笑顔が出た。
彼女が言った。
「なんか…あの時と違うね。雰囲気も表情も、すごくいい。」
心臓が跳ねた。
「俺ね、変わろうと思って、いろいろ始めたんだ。見た目も、内面も。もう、前の俺じゃないって言えるくらいには、頑張ったつもり。」
彼女は少し驚いたような顔をして、頷いた。
「うん、わかる。前よりずっと…かっこいいよ。」
その言葉に、昔の俺なら固まっていただろう。でも今の俺は、余裕を持って微笑むことができた。
「ありがとう。じゃあ、今度こそ、俺とちゃんと“デート”しない?」
彼女は少し笑って、うなずいた。
「…うん、いいよ。」
アンチエイジングは、ただ若作りをすることじゃない。自分を諦めないことで、心まで変わる魔法だ。
あの時何度もフラれた彼女が、今、目の前で俺を“男性”として見ている──。
これは、40代の俺が掴んだ、小さな奇跡の物語。