
※これはアンチエイジング物語です。
学生時代、俺は“いないも同然”だった。スポーツも勉強も中の下。目立つことが苦手で、いつも教室の隅にいた。卒業アルバムの寄せ書きには、「また会おうな!」すら書かれていない。誰の記憶にも残らない──そんな男だった。
40代になり、久しぶりに同窓会の連絡が来た。正直、行くつもりはなかった。だって、俺が行っても誰も気づかないだろうし、会話の輪に入れる自信もない。
でも、なぜか今回は違った。鏡に映る今の自分を見て、ふと思った。
──これなら、少しは話せるかもしれない。
そう思わせてくれたのは、ここ数年で始めた“男磨き”の習慣だった。きっかけは、小さなこと。肌荒れに悩んで買った化粧水、体調を整えるために始めたプロテイン、ジム通い。誰に見せるわけでもない、ただ自分のための努力だった。
最初は変化を感じなかった。でも、半年、1年と続けていくうちに、肌が明るくなり、体が引き締まり、服の似合い方が変わった。何より、鏡を見る自分の目つきが、どこか誇らしげだった。
「人生、ここからでも変えられるんじゃないか?」
そんな気持ちが芽生えた。そして俺は、同窓会に行くことを決めた。
──そして、当日。
都内のホテルの会場に入った瞬間、いくつもの視線が俺に向いた。
「……誰?」
「え、あの人誰だっけ?」
視線の先には俺がいた。周囲のざわつきが、やがて驚きに変わった。
「え!? もしかして──高橋!? 高橋真一!?」
そう、俺の名前すら忘れられていたクラスメイトが、記憶をたどりながら叫んだ。
「嘘でしょ…!? 別人じゃん!」
スーツが似合っていると言われた。肌がキレイだと言われた。背筋が伸びていて、自信にあふれて見えるとまで言われた。学生時代は誰の記憶にも残らなかった俺が、今ここで“話題の中心”になっていた。
「どうしたらそんなに変われるの?」
「何かやってたの? ジム? 美容?」
みんなが俺に興味を持ち始めた。驚きと羨望と、少しの尊敬が入り混じったようなまなざし。たった数年前なら、想像もできなかった光景だった。
中でもひときわ驚いていたのは、かつてのマドンナ・里奈だ。
「あのとき、話しかけたかったの。すごく優しそうだったし。でも、なんとなく声をかけられなくて…」
今ならわかる。当時の俺には、自信がなかった。話しかけられても、きっと目を逸らして終わっていただろう。だけど今は違う。
「今なら、ちゃんと話せるよ」
そう言った俺に、里奈が笑った。
「なら、二次会でもう少し話そっか?」
人生は一度きり。だけど、何度でも“再起動”できる。
誰かに気づかれなかった過去を持っていてもいい。大事なのは、これから“どう見せたいか”。そしてそれは、地道な努力と小さな習慣の積み重ねで、いくらでも変えられる。
同窓会の夜、俺はもう“空気”じゃなかった。むしろ、注目されていた。
──「誰だあの男…?」
そう言われたあの瞬間、ようやく俺は、自分の人生を主役として生き始めたんだと思う。

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