
※これはアンチエイジング物語です。
「40代からでも、イケてるって思われたい」
その一心だった。まさか自分が、美容にこんなにもハマるとは──2年前までは想像もしていなかった。
きっかけは、ある日ふと観たYouTubeの生配信。推しの女性インフルエンサーは、年下の男性ファンに「◯◯くん、今日もイケてる〜♡」と笑顔で手を振っていた。
その瞬間、胸がズキンとした。自分より10歳は若い彼に嫉妬したのかもしれない。でも、それ以上に「もし俺も“イケてる”って言われたら…」そんな願望が芽生えた。
いやいや、40代のおっさんが何言ってんだ。でも心の中では、どこか火がついていた。
翌日、職場のデスクで“メンズスキンケア”を検索していた自分に驚いた。けれど、もう止まらなかった。
まず始めたのは洗顔と保湿。これまで石けん1本で済ませていた肌に、化粧水と乳液が加わった。最初は面倒だったが、1週間もすると肌のつっぱりがなくなり、少しツヤが出た気がした。
次に取り組んだのが、ホワイトニング。推しの笑顔を見て「俺の黄ばんだ歯じゃダメだ」と思い、ホワイトニングジェルを購入。2ヶ月後、鏡の前で微笑んだ自分の歯に、少しだけ自信が持てた。
そのうち、推しの「健康な人って素敵!」という発言が頭にこびりつき、ジムに通うようになった。週3回の筋トレとランニング。体重は5kg減り、ベルトの穴が1つ縮んだ。
そしてついに、美容院で髪型を変えた。10年近く同じだったサイド分けをやめ、少し遊び心のあるショートヘアに。美容師の「若返りましたね」という言葉が、最高のご褒美だった。
気がつけば、鏡を見るのが楽しみになっていた。何より、見た目の変化に比例して、心も変わっていった。
「俺なんかが推しに好かれるわけない」と思っていた過去の自分は、もういない。
ある日、推しの配信に初めてコメントをした。
「◯◯ちゃんのおかげで、自分磨きがんばってます。少しはイケてる男になれたかも!」
すると数秒後、画面の中の彼女がコメントを読み上げた。
「え〜!うれしい!がんばってるってすごいし、めっちゃイケてるよ〜!」
スマホ越しの声だった。でも、その一言が、どんな言葉よりも俺の心を震わせた。
あの日、憧れだった“イケてる”を手に入れた気がした。
もちろん、俺は芸能人じゃないし、特別にモテるわけでもない。でも、「見た目を磨くことが自信につながる」という感覚は、まぎれもなく本物だった。
40代だからこそ、「変わる勇気」が人生を大きく動かす。
俺の大逆転劇は、まだ序章にすぎない。