「俺たち、同い年」〜アンチエイジング男子vs放置男子・40代のリアルバトル〜

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※これはアンチエイジング物語です。

昼下がりのオフィス。

窓から差し込むやわらかな陽光が、会議室のホワイトボードに長く影を落としている。

新プロジェクトのキックオフ会議が始まる数分前、部署内のメンバーが続々と集まり始めた。

俺は何気なく空いている椅子に腰を下ろすと、隣に座った若手女子社員の咲良が、小声で耳打ちしてきた。

「部長、あの…新しく配属された◯◯さんって、部長の“上”ですか?」

突然の質問に、一瞬、誰のことかと思って彼女の視線の先を追う。

見ると、向こうの席に座っている男──中嶋だ。旧知の仲でもある。

「え?アイツ?いや、俺と同い年だよ?」

俺がそう返すと、咲良の表情がみるみる変わった。

目を見開いたまま固まり、口元がわずかに開いた状態で声が出ない。

──ああ、これが“フリーズ”ってやつか。

「……え? 同い年、なんですか……?」

「うん、昭和58年生まれ。中学なら同級生だな、俺ら」

しばらく沈黙したあと、咲良はゆっくりと俺と中嶋を交互に見比べ、ため息まじりにこう言った。

「なんか……人生って残酷ですね」

俺と中嶋──彼とはかつての同期だ。

配属先が違ったから深い付き合いはなかったが、飲み会では何度か顔を合わせていた。

彼は昔から「細けぇこと気にしない」が口癖。

肌ケアなんて女のやること、というタイプで、昼はいつもコンビニのカップラーメン、午後は喫煙所の常連。

たまに早く帰っても、家で飲みながらYouTubeを見るのが日課だとか。

対して俺は──40歳を迎えた時、鏡に映る自分の“老い”に強烈な危機感を覚えた。

「これはマズい」と思った瞬間から、生活を180度変えた。

炭水化物の摂取を控え、週3回の軽い筋トレ。

毎朝の青汁、ビタミンと亜鉛のサプリ。

洗顔後には化粧水、美容液、時々パック。

そして何より大切にしたのは、朝の鏡の前で「今日の自分、イケてるか?」と問いかけること。

誰に見せるでもない、自分との約束だった。

正直、若作りと言われても構わないと思っていた。

老け込んで人生を諦めたような目になるくらいなら、必死に抗ってやる。それが、俺の選択だった。

そして、いつの間にかそれが“違い”として周囲に伝わっていたらしい。

「部長って、40代には見えないですよね」

「清潔感すごいっすよね。若手とも自然に話してるし、ちょっと羨ましいです」

そんな言葉を若手たちからかけられるたびに、内心でガッツポーズ。

俺のルーティンは、確かに結果を出している──そう実感する瞬間だった。

ただ、それを面白く思わない人間もいた。

中嶋だ。

ある飲み会の帰り道、彼がふとこんなことを言った。

「お前、なんか“作ってる”感じするよな。無理してんじゃねぇの?」

ああ、来たな…と思った。

でも、俺は笑って返した。

「作ってるよ。だって、“老けたくない”ってのは本音だからな」

「はは、必死だな」

彼の言葉は、少しの皮肉を含んでいた。

でも俺は、グラスの氷を転がしながら静かに言った。

「……必死にもなれない奴の方が、俺は怖いよ」

そして、その1ヶ月後。

会社の健康診断の結果が返ってきた。

中嶋は、血圧・脂質・肝機能…すべての数値が基準オーバー。

「要精密検査」の朱印が並ぶ診断書を見つめながら、呆然としていた。

「……俺、やばいのか?」

その言葉に、なぜか俺は心の奥で小さく疼くものを感じた。

ライバルだった。でも、同期でもある。

だからこそ、こんな時に手を差し伸べたくなる。

「まだ間に合うよ。40代なんて、まだ1クール目みたいなもんだろ」

思わずそう口にした自分に驚いたが、たぶん、本心だった。

すると中嶋が、少し俯きながらポツリとつぶやいた。

「お前みたいに、始めてみるか……“自分に手をかける”ってやつ」

それから数ヶ月。

中嶋は、明らかに変わった。

ラーメンばかりだった昼食は、今ではサラダチキンと玄米おにぎり。

エレベーターを使わず、階段でウォーキング。

喫煙所には姿を見せなくなり、「部長、化粧水ってやっぱ最初に叩き込むんすか?」なんて聞いてくる。

そんなある日、オフィスで咲良がぽつりと言った。

「最近、中嶋さんって若返りましたよね! なんかイキイキしてて、雰囲気変わったなって」

今度は、俺がフリーズする番だった。

驚いた。でも、不思議と嬉しかった。

努力は、伝播する。そして、誰かの人生をも変える。

リアルな40代は、努力次第で“化ける”。

放置した者と、戦った者。

そして、気づいた者はまた戦いを始める。

これは、“見た目年齢”という名のリアルバトル。

けっして若者に勝つためじゃない。

ただ、自分に誇れるように──

鏡の中の“今日の自分”を、少しでも好きになれるように。

^_^

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