※これはドラゴンクエスト風のアンチエイジング物語です。
プロローグ
その昔、男たちに宿る黄金の力――
それは「テストステロン」と呼ばれていた。
活力。自信。闘志。色気。そして未来へ進む意志。
すべてはこの“男の魔法”によって支えられていた。
しかし、時は流れ。
ミドルエイジ王国に住まう男たちは、加齢という名の呪いに蝕まれていった。
――「もう無理が利かない」
――「やる気が出ない」
――「オレ、もう歳かな……」
失われたテストステロン。
その魔力を取り戻すため、ひとりの男が立ち上がる。
名をヨンジュウ。齢40にして、再び剣を握った“元・勇者”である。
第1章「減少の呪いと、心の静寂」
年齢を重ねた男が最初に気づくのは、“失われていく”ことの恐怖だ。
だが、それが何かを知らぬまま、気力を失っていく男たちが後を絶たなかった。
ヨンジュウは、ある日ふと思った。
「……最近、怒る気力すらないな」
若い頃は闘志があった。勝ちたい、登りたい、挑みたい。
だが今は、全部どうでもいい。汗をかくことも、異性に見られることも気にしない。
そのとき、老賢者・アンドロゲンが現れる。
「それは“テストステロンの枯渇”じゃ。
かつての男たちを駆り立てた魔法……今やその力は、おぬしの体から消えかけておる」
ヨンジュウは呟いた。
「それ……取り戻せるのか？」
老賢者は深く頷いた。
「ただし、それは簡単な道ではない。怠惰、甘え、ストレス、ジャンクの魔物を倒さねばならぬ」
こうして、ヨンジュウのテストステロン探索の旅が始まった。
第2章「筋の神殿と、鉄の儀式」
テストステロンを呼び起こす“秘儀”が、筋の神殿に伝わっているという。
それは、肉体を鍛え直すことで眠れる魔力を再び燃やす儀式だった。
ヨンジュウは神殿で“バーベル僧”と出会う。
「この鉄（バーベル）を持て。おぬしのテストステロンは、ここで再誕する」
初日は、重さに潰された。
2日目は、足が震えた。
3日目、汗とともにヨンジュウは思い出した。
「……オレ、まだ戦えるな」
筋肉に負荷をかけることで、体の奥から熱が立ち昇る。
それは“戦闘モード”に入る合図。眠っていたテストステロンが目覚め始める。
バーベル僧は告げる。
「筋トレとは、鍛錬の儀式であると同時に、“自己肯定”の魔法なのじゃ」
こうしてヨンジュウは、筋の神殿を後にした。
第3章「食の迷宮と、肉の祝福」
テストステロンの魔力を支えるのは“素材”だ。
偏った食、砂糖の魔物、酒池肉林の罠……それを乗り越えた先に、本当の力が宿る。
ヨンジュウは食の迷宮へと進む。そこはファストフードの幻影が蠢く危険地帯。
「この揚げ物、うまそうだ……」
一歩踏み出した瞬間、脂の魔物「アブラーダ」が襲ってくる！
だが、ヨンジュウは剣を振り抜く。
「もうお前には負けない！オレには、クリーンなタンパクが必要なんだ！！」
彼が見つけたのは――
- 赤身肉の祭壇
- 魚の泉
- 卵の塔
- ナッツの森
これらはすべて、テストステロンの“供物”だった。
バーベル僧の言葉がよみがえる。
「テストステロンは、“何を入れるか”より“何を断つか”が大事なのじゃ」
迷宮を抜けたヨンジュウは、体の中に力が満ちていくのを感じた。
第4章「ストレス渓谷と沈黙の影」
最大の敵は、目に見えない。
現代を生きる男たちの力を奪う、静かな魔物――その名は“ストレッサー”。
ストレス渓谷では、数々の幻聴が勇者を惑わせる。
「もっと働け」
「男は黙って我慢しろ」
「そんなことにこだわるなんて子どもだな」
心の中に沈んだ“過去の呪い”が、テストステロンを封じていたのだ。
だが、ヨンジュウは気づいた。
「オレが弱ってるのは、怠けてるんじゃない。戦い方を忘れてただけだ」
渓谷の中で、彼は瞑想を始める。
呼吸を整え、心を静め、今に集中する――
それは、ストレッサーを倒す唯一の魔法だった。
最終章「テストステロンの泉と、男の再覚醒」
数々の試練を乗り越え、ヨンジュウはついに“テストステロンの泉”に辿り着く。
そこにはかつての自分が、待っていた。
泉の奥から現れたのは、若き日のヨンジュウだった。
「オレはずっと、お前を待っていた。
“歳だから”と諦めるな。“どうせ”なんて言うな。オレたちは、まだやれる」
2人のヨンジュウが剣を交わす。
それは戦いではない。自己との対話だった。
やがて光が差し込む。
泉が輝き、男の体に再び火が灯る。
――テストステロン、完全復活。
ヨンジュウは微笑む。
「オレはもう、“元・勇者”じゃない。“現役・戦士”だ」
エピローグ 〜旅は、終わらない〜
テストステロンの力を取り戻したヨンジュウは、今も戦っている。
家庭で、職場で、そして自分自身の中で。
だが、もう迷わない。
テストステロンとは、活力の魔法ではなく、“生き方”そのものなのだ。
そして、ミドルエイジ王国には今日も新たな戦士が立ち上がる。
君の中にも、眠れる魔法がある。
それはいつでも、目覚めを待っている。
^_^
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