
40代も後半に差しかかると、なんだか体と心が思うように動かない。仕事へのやる気も以前ほど湧かず、朝起きても疲れが抜けきらない。かつては情熱を注いでいた趣味にすら、最近は手が伸びない——。
そんな自分に気づいたのは、ある冬の朝でした。目覚ましが鳴っても体は鉛のように重く、妻の「朝だよ」という声がどこか遠くに聞こえる。いや、正確には聞こえていたのに、反応する気力がなかったという方が正しいかもしれません。
「歳かなぁ」
そのとき口をついて出たのは、そう自分を納得させる言葉でした。でも内心では、「まだ40代で老け込むのか?」という、どこか釈然としない気持ちが残っていました。
数日後、何気なくネットで「40代 疲れがとれない」と検索したところ、目に飛び込んできたのが「男性更年期障害」という言葉でした。
私は「えっ、更年期って女性の話じゃないの?」と思いながらも、気になって調べ続けました。そして気づいたのです。「これは他人事じゃない」と。
男性にも、更年期はある
私たち男性も、加齢とともにホルモンのバランスが崩れます。特に注目されるのが、テストステロンという男性ホルモンです。テストステロンは筋肉をつくったり、性機能を維持したりするだけでなく、メンタルの安定や集中力にも深く関わっているのです。
そのホルモンが、40代以降になると少しずつ減っていく。すると次第に、
- 意欲が湧かない
- 仕事に集中できない
- 理由もなくイライラする
- 性欲が減る
- 疲れやすくなる
といった、心と体の不調が現れ始めます。医学的にはこれを「加齢男性性腺機能低下症(LOH症候群)」と呼びます。
私も例に漏れず、これらの症状に思い当たる節が多くありました。
「気のせい」ではなかった
最初は気のせいだと思っていました。夜の付き合いが増えて疲れてるだけ、仕事のストレスが溜まっているだけ、運動不足なだけ——。けれど、そう思い込んで対策を後回しにした結果、どんどん気分が沈んでいったのです。
妻から「最近、元気がないね」と言われ、ようやく自分の状態を受け入れる気になりました。そして一歩踏み出して、泌尿器科で検査を受けることにしました。
血液検査と問診(AMSスコアという簡単な質問票)を受けた結果、「テストステロンがやや低め」「更年期の可能性あり」と言われました。明確な病気と診断されたわけではありませんが、自分の中では「やっぱりそうだったのか」と腑に落ちました。
何より、これで“自分の不調には理由がある”と分かったことが、すごく大きな意味を持ちました。
小さな習慣で、男は変われる
治療といっても、いきなり薬を使うわけではありません。まずは生活習慣の見直しから始めました。
意識して行ったのは以下のようなことです。
- 毎朝、軽い散歩と筋トレ(スクワットや腕立てを10分程度)
- 睡眠のリズムを整える(スマホを寝室に持ち込まない)
- ビタミンD、亜鉛、マカなどのサプリメントを導入
- 甘いものや揚げ物を控える
- カフェインやアルコールの摂取を見直す
- 週末は“何もしない”休息日を設ける
中でも筋トレと睡眠改善は、テストステロンの分泌を促すうえでかなり効果的でした。週3回の筋トレを始めて3ヶ月ほど経つと、体の軽さを感じる日が増えました。
また、意外にも効果があったのが「人との会話」でした。気心の知れた友人や、家族との他愛ない会話が、孤独感やストレスをやわらげてくれたのです。
「老化」は止められない。でも「老い」は抗える
40代の男性は、体力・気力・外見の変化を急に実感し始める年代です。特に「男は黙って我慢するもの」という時代に育った私たちは、調子が悪くても助けを求めることが苦手です。
でも、それが逆に「老け込み」を早めてしまいます。
「更年期なんてまだまだ先」「自分には関係ない」と思っていたら、気づいたときには心も体もボロボロになっていた——そんな例は少なくありません。
大切なのは、「自分の変化に気づき、ケアすることを恥じない」ことだと、私は実感しました。
筋トレをして、栄養を見直し、よく眠り、よく笑う。それだけで、40代の体と心は驚くほど変わるのです。
「男の更年期」を語れる人になろう
男性更年期は、まだまだ語られることが少ないテーマです。でも、それは「情報がないから」ではなく、「語る人がいないから」かもしれません。
私はこの記事を通じて、「俺もそうだった」と声を上げられる人が増えてくれたらと思っています。
疲れがとれない、気持ちが沈む、何もしたくない——。そんなとき、「歳のせいだ」と一言で片づけるのではなく、「もしかしてホルモンのせい?」と疑ってみてください。
そして一歩踏み出し、少しずつ自分のケアを始めてみてください。それは決して恥ずかしいことではありません。むしろ、自分の人生を取り戻すための、誇らしい第一歩です。
「老いに、抗え。」
それは見た目や筋肉の話だけではなく、心のあり方そのものに対する姿勢でもあるのです。
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